ドレスの裾を持ち、天井高く足を蹴り上げている姿に、世界の3分の1を支配する帝国の皇女らしからぬ登場の仕方に固まる面々。
しかしルルーシュとニーナは動じなかった。
ルルーシュにとってこのようなことは幼い頃アリエスの離宮に住んでいた時に経験済みだったし、ニーナはいうまでもなくユーフェミアLOVEなので、どんな姿であろうと全て脳内で美化、敬いの存在に変換してしまうため驚きはしなかった。
もちろんナナリーも経験済みだったのだが、如何せん目が見えなく、音を聞き分ける能力が特化している彼女にとってドアをぶち破り吹き飛ばす音があまりにも大き過ぎビクリと反応してしまった。
ユーフェミアの騎士であるスザクが固まっている面々の中でいち早く我に返り、聞きたいことが多々あるが一応形式的なことを言葉にする。
「あ、あの皇女殿下ご機嫌麗しゅう。してなぜこちらに………?」
「あら、それをあなたがおっしゃるのですか? 面白そ…、いえ萌えがある所に私なくして何があるんです?」
「おっしゃっている意味がわかりませんが………?」
「私、『ルルーシュファンクラブ』のゴールド会員及び幹部ですよ。“ルルーシュ萌えアンテナ”に引っ掛からないわけがありません」
“ルルーシュ萌えアンテナ”?
一体なんなんだ、それはっ!?
ルルーシュは突っ込みたい気持ちでいっぱいだったが相手は皇女。
頬を引きつる程度にとどめておいた。
「さすがわ皇女殿下、いえゴールド会員並びに幹部ですわっ!」
すかさずミレイが喝采を送る。
目上の人物に媚を売ることを忘れない。
なにせ極東の島国であっても一つの学園及び全世界に向けて『ファンクラブ』というビッグビジネスをしているのだ。
金ヅルが多いに越したことはない。
そういう頭の回転の良さから没落貴族であろうと、お祭り好きで湯水のようにお金を使っても裕福な生活が送れているのだ。
「私もゲームに参加させてください」
「もちろんです」
こうして生徒会メンバー+ナナリー+第3皇女ユーフェミアでゲーム再開となった。
それ行け!王様げぇむ4
「じゃあ1回くじを集めるよ、いいね?」
「………はい」
折角王様を引き当てたのに引きなおしとはツイテいない。
ガクリと肩を落とすスザク。
その様子を見たユーフェミアが
「この回はこれで続けませんか」
と助け船を出した。
「ユフィ………」
ジーンと胸が熱くなるが、次の瞬間まったく違うものへと変わる。
「スザクのモノは私のモノ。私のモノは私のモノ。自然の理です。なので今回の王様は私です、良いですね?」
にっこりと微笑んではいるが、中身はドロドロ。
なんと都合の良いジャ○アニズムだろうか。
「その通りです、ユーフェミア様!」
もはやニーナは信者と成り下がっていた。
こうしてニーナの後押しもあり、スザクが王様となる機会が永遠に失われてしまった。
「じゃあ、命令しますね☆」
一体権力者はどのようなことを命令するのか、好奇心と共に身の危険を感じた。
「1番がサザーランドに乗って、私のコーネリア姉様に騎士だかなんだか知りませんけど、嫌らしい視線を向けているギルフォードを踏み付けて、そのまま地面に埋め込んで来てください。2番はランスロットに乗ってギフォードと一緒で私のコーネリア姉様に気持ちが悪い程執着しているダールトンをフルスロットルで体当たり、空のお星さまにしてください。3番がそれを携帯のテレビ電話で中継してください。ターゲットの二人はお姉様のお名前で近くの公園に呼び出していますので。サザーランドとランスロットは特派のロイドさんとセシルさんに頼んで、この店の前まで持ってきていますので、お願いしますね」
一気に命令を発表するユーフェミア。
それに対して準備万端なのが末恐ろしい。
「……………………あの、もう一度命令をいってもらえますか?」
「…………私、耳が遠くなったみたいで…………」
「幻聴………かな……………?」
誰もが耳を疑うような命令だ。
しかしその中でニーナは違っていた。
「わかりました、ユーフェミア様! 私1番なんで、あの眼鏡殺ってきますねっ!!!」
ニーナも眼鏡をかけているのだが気にしない。
それよりも、なんてぶっそうな命令をするんだっ!とツッコミたい。
「頑張ってくださいね。そういえば2番はどなたですか?」
「………………私です………」
名乗り出たのは表の顔は良家の箱入りお嬢様で通っているカレン・シュタットフェルト。
裏の顔は言わずと知れた黒の騎士団0番隊所属紅蓮弐式パイロットであり、健康的でハキハキとものを言う少女であった。
確かにコーネリアの側近を殺るチャンスなのだが、たった1人の将軍の命で捕まり日本を取り戻すこと叶わないなど御粗末すぎる。
今日ルルーシュにグラッときてしまったが、ずっとゼロに付いていくと決めているのだ。
不安そうな表情を浮かべているカレンを見ると、ユーフェミアはキュッと彼女の両手を包み込んだ。
「大丈夫。私がすることにお姉様は咎めたりしません」
「………するのは私とニーナなのですが………」
「私が責任を持ちますから、殺っちゃってください」
「………………でも「いいから殺ってくださいね☆」
有無も言わさぬように間髪いれず笑顔で言い切るユーフェミア。
なかにものすごい憎悪の渦が―――。
「………………わかりました」
カレンの了解を得るとユーフェミアはパチンと指をならした。
「呼ばれて飛び出てジャジャ〜ジャ〜〜〜ン♪」
陽気な掛け声と共に部屋に飛び込んできたのは特派のロイドであった。
「「「「「「「「………………あの………」」」」」」」」
「ほら、やっぱり。そんな登場の仕方やめておいた方がいいといったじゃないですか。皆さん困っていますよ」
ロイドに続いて暖かい雰囲気の女性、セシルが姿を現わした。
「だってセシル君。普通の登場の仕方をしても面白くないじゃない」
「面白さなんて誰も求めていません。冗談は顔だけにしておいてください」
「僕の顔のどこが冗談なのさ〜?」
「今一度鏡をごらんになったらいかがです?」
「………………ヒドイ………クスン……」
その場にしゃがみこみ“の”の字を書くロイド。
「………そんな小学生みたいなことなさっていないで、キーを渡してあげてください」
「そんなことって………」
「なんの為に来たのかお忘れになったのですか?」
「あっ、そうだった。これサザーランドとランスロットのキーだから」
カレンとニーナにポンと簡単にキーを渡した。
「あの、いいんですか? 軍に関係のない民間人に渡しても…」
スザクはあまりの無謀さに反論を言わずにはいられなかった。
ランスロットは世界にたった一機の第7世代ナイトフレームだ。
それを簡単に民間人の一学生に貸し与えるなどもってのほか。
「だって仕方ないじゃない。シュナイゼル殿下とコーネリア総督の命令なんだから」
「しかし軍属でもない民間人がそのようなことをすればテロ行為とみなされますよ!」
「あぁ、それは上がもみ消すってことだよ」
「「「「「「「「………………」」」」」」」」」
それでいいのか、ブリタニア軍…………。
数分後、地面にめり込む騎士と、ものすごい勢いで吹っ飛んでいく将軍が見られたそうな。
不幸なブリタニア軍人に幸あれ。
あとがき
今回ブリタニア軍の扱いが悪くてごめんなさい。
嫌いじゃないんですよ、好きです。
単にいじりやすいだけなんです。
次話はもう少し扱いをよくしたいです。
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